第4号 核軍縮議論に生まれた変化(2023年8月9日)

 第2週目の半ばに入った会議は、予定されたスケジュールを前倒しにして進んでいる。時系列では前後するが、ここでは第1週目に行われた核軍縮をめぐるクラスター(問題群)1と、消極的安全保証(NSA)に関するクラスター1の下部機関(subsidiary body)の議論を振り返り、いくつかの論点を整理してみたい。

 NPT第6条の核軍縮義務や過去の再検討会議における合意を履行していないとして核兵器国を強く非難する非核兵器国と、悪化する国際安全保障環境などを理由に自国の立場を正当化する核兵器国――。この両者の根深い対立構造は基本的に変わらないが、ロシアによるウクライナ軍事侵攻と大国間に生じたさらなる亀裂、高まる核使用リスクという未曽有の事態を前に、従来の議論には若干の変化が生まれている。

核リスク低減と透明性・説明責任

 核軍縮について異なる立場をとる国々の発言の多くに共通していたのが、核リスクの低減に向けた具体策を求める声であった。なかでも、核兵器国に対する透明性(transparency)と説明責任(accountability)の要求はかつてないほどの高まりを見せている。

 今回の準備委員会では、核兵器国への報告の要求に留まらず、そうした報告に関する、非核兵器国や市民社会を含めた双方向的な対話の場をNPT再検討サイクルの中に設けることも議論された。

消極的安全保証(NSA

 NSAとは、核兵器国が非核兵器国に対し核兵器の使用も、使用の威嚇も行わないと約束することを指す。ロシアによってウクライナの安全を保証した1994年のブダペスト覚書が破られ、核兵器使用がちらつかされる現状において、NSAをめぐる議論は新たな局面を迎えていると言えよう。

 しかし核兵器国の姿勢は従前のままであった。米国は不拡散義務を遵守している非核兵器国にNSAを供与しているとし、また、法的拘束力のあるNSAについてはロシアともども非核兵器地帯の議定書を通じて供与していると繰り返すのみで、溝は深まらなかった。

核兵器禁止条約(TPNW)

(中村桂子)

 

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